何が起きるようになるか
仕組みは単純です。会話の要点をリポジトリ(GitHub 上の、変更履歴つきの保管箱)にファイルとして残し、 セッションの開始時に「フック」(決まったタイミングで自動的に動く小さなプログラム)がその索引を読み込ませます。 記憶を Claude の中ではなく自分のリポジトリに置くので、履歴が全部残り、間違えても巻き戻せ、サービスに囲い込まれません。置き場は、クラウド版では GitHub、デスクトップ版では GitHub でも社内に設置した Git サーバー(Gitea や GitLab など)でも手元のフォルダだけでもかまいません。
できるようになることは4つです。
- 続きから話せます。「先週相談した件だけど」で通じます。索引には「いつ・何を相談したか」と詳細へのリンクだけを置き、中身は詳細ファイルにあるので、AIは必要なときだけ詳細を開きます。
- 調べ物が積み上がります。「調べてほしい」と頼んだ内容はテーマごとのフォルダにまとまり、何回に分けて聞いても同じフォルダに追記されます。
- 記録の忘れが起きにくくなります。セッションの終了時に、何も記録されていなければ「記録すべきか」を AI 自身に判断させる確認が入ります。
- 安全側に倒してあります。鍵(パスワードや API キー)はファイルに書かない、外部サービスへの書き込みは候補を見せて同意を得てから、という約束がルールブックに最初から入っています。
中身の構成
雛形は次のファイルで構成されています。覚える必要はありません。どれも AI が読み書きするものです。
人が開くことがあるのは、ルールブック(CLAUDE.md)と索引(INDEX.md)くらいです。
CLAUDE.md # ルールブック。毎セッション自動で読まれる HANDOVER.md # AIが読む初期化の手順書(初期化後は tools/ へ移る) .claude/ settings.json # フックの登録 hooks/session-start.sh # 開始時: 索引2枚を読み込ませる・点検の結果を知らせる hooks/record-check.py # 終了時: 何も記録していなければ確認を入れる memory/ INDEX.md # セッションの索引(日付・一言・リンク) YYYY-MM-DD-〇〇.md # 各セッションの詳細 ARCHIVE.md / LESSONS.md / ACCURACY-LOG.md / REPOS.md # 退避先・学び・事故の記録・関係リポジトリの台帳 private/ # 暗号化した記録(任意。有効化するまで空) research/ INDEX.md # 調査テーマの索引 TEMPLATE.md # テーマの雛形 <テーマ名>/README.md # テーマごとの調査記録(report.html を添えることもある) tools/ index-health.py # 索引の字数・リンク切れなどを点検する index-tidy.md # 索引の棚卸し(整理)の手順書 setup-script.sh # クラウド版で入れておく道具の一覧 make-standalone.py / private-notes.sh # レポートの包み(デスクトップ版)・暗号化メモの道具 .gitattributes / .gitignore / .mcp.json.example
memory/INDEX.md と research/INDEX.md)は毎セッション自動で読み込まれるので、
書いた分だけ毎回のコストになります。そのため索引には「いつ・何を・結論一言・リンク」だけを書き、中身は詳細ファイルに置きます。
索引の字数は点検スクリプトが毎回測り、増えすぎると棚卸し(古い行を退避先へ移す整理)を促します。
作り方 — クラウド版(claude.ai/code)
ブラウザだけで完結する版です。手元のパソコンに何も入れません。人がやるのは「置き場を作る」「雛形を渡す」「最初の一言を貼る」の3つで、残りは AI が自分で組み上げます。
Step 1 — 記憶の置き場を作る必須
- github.com でアカウントを作ります(無料でかまいません)。
- 「New repository」から新しいリポジトリを作ります。名前は
claude-workspaceなど。必ず Private を選びます(自分だけが見られる設定)。「Add a README file」にチェックを入れておきます。 - claude.ai の 設定 → コネクタ → GitHub で連携を許可し、このリポジトリへのアクセスを与えます。
クラウド版では GitHub が必須です。claude.ai/code が GitHub からリポジトリを取り込む仕組みのためです。
Step 2 — 環境を作る必須
claude.ai/code(Claude Code on the web)を開き、環境(Environment。作業部屋の設定)を1つ作って、Step 1 のリポジトリを選びます。- 同じ設定画面の Setup script 欄に、雛形の
tools/setup-script.shの中身を貼ります。PDF や Word/Excel を読むための道具を自動で入れる設定です。(あとからでもかまいません。無くても記憶の仕組みは動きます。)
Step 3 — 雛形を渡して、最初の一言を貼る必須
- このページの上にある「雛形をダウンロード(zip)」でファイルを手元に保存します。
- Step 2 の環境で新しいセッションを開き、zip をチャットに添付して、次の文を貼ります。
Step 4 — AI が組み上げる必須
ここからは AI の仕事です。環境を判定し、ファイルを配置し、フックが動くことを手で実行して確かめ、最初の記録を書いてコミット(保存)します。 終わると「できたこと」と「あなたがやること」を番号付きで報告してきます。 報告の中の「ブランチ」「マージ」「push」といった言葉は AI への指示なので、意味を覚える必要はありません。
Step 5 — 動いているか確かめる必須
新しいセッションを開いて(フックは開始時に動くので、同じセッションでは確かめられません)、次のように聞きます。
「初期化した」という記録が1行返ってくれば完成です。以後、このワークスペースでの会話は自動的に積み上がります。 返ってこない場合は、そのセッションで「記憶の読み込みが動いていないので、原因を調べて直してください」と頼めば、AI が自分で調べます。
作り方 — デスクトップ版(CLI/VS Code)
手元のパソコンで Claude Code を動かす版です。同じファイル一式がそのまま動きます。クラウド版と違うのは、道具を自分で入れることと、 予約実行(Routine)とレポートの公開(Artifact)が無いことだけです。
- Claude Code の CLI(
claudeコマンド)か VS Code 拡張を導入します。あわせてgitとpython3が要ります(多くの環境には最初から入っています)。 - 記憶の置き場を決めます。標準は Step 1 と同じ要領で GitHub に private リポジトリを作り、手元に取得(clone)する形ですが、社内に設置した Git サーバー(Gitea や GitLab など)でも、手元のフォルダだけ(どこにも送らない)でもかまいません。手元だけの場合は、記録のすべてがそのフォルダにあるので、フォルダごと定期的にバックアップしてください。Windows の方は WSL(Windows 上の Linux)の中に置いてください。
/mnt/cの下に置くと極端に遅く、フックも動きません。 - zip をリポジトリのフォルダに展開します。
- そのフォルダで Claude Code を起動し、次の文を貼ります。
- PDF や Office ファイルを読むための道具は、報告に出てくる手順で自分で入れます(例:
sudo apt install poppler-utils)。 - 外部サービスの鍵は、シェルの設定か
.claude/settings.local.json(GitHub には上がらないファイル)に置きます。 - 調査レポートは
tools/make-standalone.pyで包んでブラウザで開きます。 - クラウドで始めたセッションを手元に引き継ぐこともできます(
claude --teleport)。逆方向はできません。
あとから足せるもの
どれも「足したい」と Claude に言えば、手順書(tools/HANDOVER.md の「任意モジュール」)を読んで組んでくれます。
人がやるのは画面操作と鍵の登録だけです。
| 名前 | できるようになること | Claude に言う文 |
|---|---|---|
| 外部サービス接続(MCP) | Web 検索や専門データベースなどを Claude の道具として使えます。MCP は AI と外部サービスをつなぐ共通規格で、URL につなぐ方式なら導入作業がありません。鍵はファイルに書かず、環境の設定に置きます。 | 「MCP で〇〇を使えるようにして」 |
| コネクタ | claude.ai の設定から Gmail・カレンダー・タスク管理などを接続できます。雛形のルールブックには「メールは下書きまで・カレンダーは読むだけ・タスクは印を付けて読み書き」という線引きが最初から入っています。 | 「コネクタの線引きを決めたい」 |
| 予約実行(Routine) クラウド版のみ | 決まった時刻に無人でセッションを起こします。雛形では索引の棚卸し(週1回)に使う想定で、手順書と実行の記録の残し方まで用意してあります。 | 「索引の棚卸しを Routine で自動化して」 |
| 暗号化した記録 | 人に見られたくない話題を、暗号文だけの形で残せます。読むには鍵が要り、AI も「合図」があるまで開きません。記録しない、という選択肢も最初から用意されています。 | 「非公開メモを有効にして」 |
| 他リポジトリの台帳 | プログラムの開発は別のリポジトリで行い、会話の記録だけをこの作業場に集める分担ができます。どのリポジトリが何の話かを台帳に残します。 | 「〇〇のリポジトリを台帳に足して」 |
長く使うためのコツ
- ルールブックを育てます。困ったことが起きるたび、その教訓を
CLAUDE.mdに1行足すよう頼みます。ルールは毎回自動で効くので、同じ失敗が繰り返されにくくなります。 - 索引は軽く保ちます。目安は2枚合計で15,000字です。超えると点検が知らせ、棚卸し(古い行を退避先へ移す整理)を AI が行います。棚卸しの是非を人に聞かないよう、ルールで決めてあります。
- ただし、削りすぎません。大きすぎる索引は毎回のコストですが、削りすぎた索引は答えを間違えさせます。迷ったら正確さを採る、と決めてあります。
- 点検も自動です。「人が思い出して測る」方式は続きません。字数やリンク切れは点検スクリプトが毎回測り、問題があるときだけ知らせます。
- 環境の改修も AI に頼めます。「開始時にこういう検査を足して」と言えば、AI 自身が自分の環境を直します。この雛形の仕組みも、ほぼすべてそうやって作られました。
- 鍵はファイルに書きません。API キーやパスワードは環境の設定(クラウド版は Environment variables 欄)に置き、ファイルには変数名だけを書きます。リポジトリが private でも、この約束は変えません。
つまずいたとき
いずれも、雛形の元になった環境で実際に起きたものです。多くは「〇〇が起きている。原因を調べて直して」と Claude に頼めば解決します。
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 記憶が読み込まれない | フックに実行権限が無い/改行コードが CRLF に変わった(Windows 側のエディタで編集した場合など) | 実行権限を付け、改行を LF に戻します。フックは失敗してもエラーを表示しないので、まずここを疑います |
| 複数のリポジトリを選んだセッションで記憶が読み込まれない | 仕様です。リポジトリを2つ以上入れたセッションではフックが動きません | この作業場だけを選んだセッションで確かめます。複数リポジトリのセッションでは AI が索引を自分で読むよう、ルールブックに書いてあります |
| 記憶の読み込みが急に来なくなった | 索引が大きすぎます。仕組み側の上限(約16,000字)を超えると、先頭の一部しか渡りません | 棚卸しを頼みます。雛形のフックは上限の手前で自分から切り、切った旨を先頭に書くので、まったく気づかない事態にはなりません |
| PDF が開けない(クラウド版) | 環境の記録が再利用されて Setup script が走らず、poppler-utils が入っていません |
セッション内で入れれば数秒で直ります。フックが不足を検知して知らせます |
| 登録した鍵が効かない | 環境の設定はセッション開始時に一度だけ取り込まれます | 新しいセッションを開始します |
| 保存(push)が拒否される | 別のセッションが先に同じリポジトリを進めました | 最新を取り込んでから保存し直します。AI が自分で行います(強制的な上書きはしない約束です) |
| Word/Excel/PowerPoint が読めない | 読み書きのライブラリが入っていません | pip install openpyxl python-docx python-pptx(クラウド版は Setup script に含まれています) |
この配布物について
- 版:v1.0.3(2026-09-02)。内容はこの版で固定してあり、元になった環境の変化に自動では追随しません。更新するときは版番号と日付を変えて配り直します。
- 入っているもの:雛形の zip(ファイル一式)と、AI が読む手順書(zip にも同じものが入っています)。
- ライセンス:MIT License(zip の
tools/TEMPLATE-LICENSE.txt)。改変も再配布も自由です(無保証)。雛形のファイルに対するもので、あなたがこれから書く記録には及びません。 - 出自:2026年8月から運用している実在の個人環境を、個人情報・鍵の情報・個人固有の運用ルールを除いて一般化したものです。手順と「つまずいたとき」の内容は、その環境での実測と実話にもとづきます。
- 記録される内容について:会話の記録はあなたのリポジトリ(GitHub や手元のフォルダ)にだけ残ります。雛形のルールブックは「リポジトリが private であることを前提に、会話の続きに要る個人情報は記録してよい」を既定にしています。変えたいときは、初期化のときに AI が聞いてきます。